CONTENTS / TOP / PROFILE / BOOKS / NEWS / a la carete / BLOG / Other Works / LINK / What's new / MAIL 



8ミリ映画自主制作の思い出


  大学一年時から四年時まで、四本の映画を作った。母体はクラスの仲間だったが、四年間で
ほとんどサークル化するほどに、夢中になった。
 一本目は、『残暑お見舞い申し上げます』という題の、ラブストーリー。70分くらいの作品。
 大学のクラスの同級生「美子」と「大介」が、紆余曲折の後に、自分にとって大切な相手に気
付いていくという話。
「一緒にいてときめく人」と「一緒にいて落ち着く人」と、どちらが自分にとって大切な存在なのか
という、学生にありがちだが、なかなか難しい(?)テーマを取り扱った。

 ▼「ときめく人」と「美子」         ▼「落ち着く人」と「美子」        ▼「大切なもの」に気付いた「美子」
 
    (8ミリ映画をVHSにダビングしたものを、デジタルカメラで撮影したもの。映像の粗さはご容赦下さい。)  

 とにかく、一年目の映画ということもあり、映画製作にまつわる「どたばた劇」が思い出深い。
 今のように、デジタルビデオなどではないから、現像が上がってくるまで、ちゃんと映っている
かどうか分からないので、大変だった。
 逆光で顔が真っ黒だったりなんてのはまだましな方。画面の片隅にカメラの「さくらや」の袋が
映っていたり、ストーリー上は数秒後のはずなのに、服装が違っていたり、髪型が違っていたり
と、てんやわんやの連続。
「撮影終了まで、美容院には行かないで下さい」なんてお願いをする羽目になった。
 それでも、全部全部、大切な思い出だ。

 二本目の作品と三本目の作品は残念ながら、ビデオになっていない。どちらも90分近い長編
だが、原フィルムが行方不明である(当時の仲間の誰かのところにあるはず?)。いつか発見
して、DVDにダビングしたいところだ。

 二本目・三本目と、随分、手馴れてはきたけれど、やっぱり、てんやわんやは、続いた。
 例えば、登場人物の会話が続いているのに、映像は一分近くも、ずっと「みかんを剥いてい
る指のアップ」なんてこともあった。
 僕としては、シュールな映像で気に入っていたのだが、アフレコチーフからは、随分とクレー
ムが来た。考えてみれば無理もない。「みかんのアップ」にセリフをアフレコしながら、次のカッ
ト(登場人物の顔のアップ)に、ぴったりのタイミングで会話を繋げなくてはならないのだから。
 他にも、せっかく海までロケに行ったのに、撮影したテープを電話ボックスに忘れてしまったこ
ともあったし、ハンググライダーの映像を撮りに筑波山まで行ったら、大渋滞に巻き込まれて、
ほとんど絵が撮れなかったなんてこともあった。ストーリー上、マネキン人形が必要になって、
車のトランクに入れていたら、トランクを開けたときに、悲鳴を上げられたりもした。
 それでも、技術的には、「オーバーラップ」「四分割画面」「ワイプ」「エンドロール」「ストップモ
ーション」と、8ミリで出来る限りを尽くした感はある。特に「ワイプ」は、二本の8ミリフィルム30コ
マ程を「正確に斜めに切って繋ぎ合わせる」という、掟破りの作業だった。
 
 四本目の作品は、『Endless』という題名の青春群像もの。
  大学卒業を間近に控えた四年生五人にスポットを当てて、「捨てなくてはならない何か」「捨て
てはいけない何か」を描いた作品。
 制作している自分達自身の大学卒業も迫っている中、「自分達が映画を作ってきたことへの
思い」も込めて、映像化した。
 四本目ともなると、今までの作品にあった「制作ドタバタ」はさすがに少なくなった。逆にその
「制作ドタバタ」を映像化した感じかもしれない。
 ラストシーンでは、ストップモーションに『The End』と、筆が走った後、数秒経って、「less」の文
字が繋がる。(この数秒のカットのためだけに、深夜の教室で朝まで撮影した……)

 ▼海に向かって「何か」を捨てる?  ▼「捨ててはいけない何か」に気付く? ▼エンドロールの一コマ


  ……

 ほとんどの作品で、僕は「脚本」&「監督」なんて、偉そうな関わり方をしたけれど、なんという
ことはない。撮影力抜群の奴や、アフレコの新技術を開発する奴や、編集に圧倒的センスを持
っている奴がいたし、演技にいたっては、多分、僕が一番、下手だったと思う。
 そして、何よりも、「制作総指揮」という形で、全体を取り仕切る、すごい奴がいた。リーダーシ
ップってのは、ああいう奴のことを言うんだろうなあと、今でも思う本当にでかい奴だった。
 六年間、同じ大学で過ごした後、結局、彼は、映像関係の仕事に就いた。
「毎日が文化祭一週間前の忙しさだ」と、同窓会で嬉しそうに言っていた。

                                             (2007.8月末)



CONTENTS / TOP / PROFILE / BOOKS / NEWS / a la carete / BLOG / Other Works / LINK / What's new / MAIL